書評

血と骨

在日朝鮮人や裏社会をテーマに、数々の力作を送り続けている梁石日の代表作の一つで、最近ビートたけし主演で映画にもなったこの作品ですが、恥ずかしながら未読で、映画化を機に文庫版を購入。沖縄旅行の鞄に入れ、帰りの羽田行きの飛行機の中で3分の2を…

『アフターダーク』

一応、前に「書評書く」と言った手前、させて頂こうとは思うのですが、読後それなりに時間が経っても、書評の書きにくいという印象は変わらないし、正直もやもやが相当に残る小説でした。村上春樹は元々、こういう一見ファッショナブルでいて暗い作品の多い…

構成は正統派、題材は異端―熊谷達也『邂逅の森』(文藝春秋)

(ISBN:4163225706) 先日、アルバイトの給与支払いと同時に数冊購入したうちの一冊。戦前の「マタギ」―東北地方に存在したプロの狩猟集団、が題材です。 この中にあるのは、基本的には少し昔に失われた東北であり、私にとってはいわば昔話、とは言っても、…

遺言―『カネに勝て!』(南風社)

(ISBN:4931062210) 私が敬愛する作家二人の共著にして、青木雄二氏の遺作となった本。前作『土壇場の経済学』の最新版という感が強いですが、青木の、死を目前にしての神がかった(「神」などというと唯物論者の故人は怒りそうだけど、実に恐るべき)先見の…