横浜市長選への疑念

日本に限らず、選挙というのは基本的に有権者の投票が正確に反映されるという信頼の下に成り立つはずのものである。独裁国家などでは選挙操作は決して珍しいことではないが、一応日本の選挙は裏でいかがわしい金や怪文書が飛び交おうとも、選挙管理自体はきちんとなされていると大多数の人が信じているだろう。私もそこまでは疑っていないし、またそこまでこの国の民主主義は崩壊していると疑いたくはない。しかし、どうもそう勘ぐりたくなるのが、今回の横浜市長選である。
横浜市は今や日本第二の都市であることもあり、政令指定都市の市長選の中でも特に注目度が高く、現職再選間違いなし、というムードでありながら、マスコミでもしばしば取り上げられていたので選挙自体をご存知の方は多いだろう。しかし、今回の市長選の開票がこの規模の都市としては異例の翌日開票となったことはどの程度の方がご存知だろうか?共同通信配信の日刊スポーツ記事によれば、「経費節減のため」今回の選挙から選管の判断により翌日開票に変更されたという。一般紙ではほとんど触れられていないが、いかなる理由であれ当日出来るものをわざわざ明日に延ばす、というのは、良からぬ魂胆、もっとはっきりと言えば、選挙操作を狙ったものではないかという疑念を捨てきれない。
あくまでこれは邪推である。しかし為政者たる者、邪推されるような行動を軽はずみに取るようでは、やはりその適性を疑われても仕方ないだろう。特に自らの出処進退に関わるようなことは、本来最も厳正を期すべきであり、今回の横浜市選挙管理委員会の決定は、恐らく二期目突入が濃厚な中田現市長にとって、大きな政治的汚点になると私は考える。
経費削減、大いに結構。金に限りはあるし、「小さな政府(行政)」の是非は別としても、貴重な予算の使い道をしっかり吟味すべきではあるだろう。しかし、金で信頼は買えないし、信頼を失ってまで金に執着するのは愚の骨頂である。今回行われたことはそういう問題ではないのか。民主主義への信頼を失ってまでの経費削減に、どれほどの価値があるのか?コストカット、小さな政府万能主義への異議申し立ての意味も込めて、そう問うてみたい。