公共放送は政府広報か

別に普段はそれほど熱心にテレビを見るわけでも、ましてやNHKウォッチャーでもないのですが、テーマ上無視出来ないので「NHKスペシャル 変ぼう(原題ママ)する日米同盟2」は視聴しました。第一部はチェックしていませんでしたが、それは故意ではなく単なる見落としです。
先日はNHKETVをある程度評価する文章を書きましたが、むしろこの番組の方がNHKの「公共放送としての」現状と限界を示しているかも知れません。法律面での米軍再編と日米防衛連携の問題や、外交上の問題は一応指摘するものの、基本的に最新防衛事情のアナウンスに留まっている印象は否めません。取材対象も日米政府、軍(自衛隊防衛庁)要人のみであり、結果としてこれは政府広報ではないかというのが私見です。一応額賀防衛庁長官と学者、軍事専門家(それも総合して再編賛成派3対反対派1というフェアとは言い難い構成。反対派も安保容認派)によるディスカッションも収録されてはいますが、その内容も含め「日本としては時代の変化に合わせ、合衆国の新しい軍事戦略に全面的に協力したい、だからそれを国民の皆さんに広く知って頂きたい」というような番組構成になっている感が否めないのです。
勿論、直接そう言っているわけではないのですが、中立を装いつつ国策をほぼ無批判に垂れ流すというのは、むしろあからさまなよりも質が悪い。アジアへの視点も、もっと言えば日本の一般市民、基地のある地域の人々への視点もない。反対意見だけを拾えと言うわけではなく、それを地域エゴと片付けるにしても、せめて触れるのが報道の最低限の仕事じゃないかと。最初に座間市民の簡単なインタビューだけで済まし、地元の生々しい基地再編への反対活動(沖縄に限らず、神奈川の各基地所在自治体も然り)には蓋をしたこの番組は、やはり政府広報と言わざるを得ないでしょう。
理想論だけ言っていれば現実が変わるわけではありません。しかし、理想なき現状肯定はその悪しき部分を追認し、より状況を悪化させることになるだけです。石橋湛山の「小日本主義」にはまだ早いでしょうが、せめて現実を「総合的に」捉え、少しでも脱基地、脱米軍、脱軍国主義への光を見出そうとしなければ、戦争をなくすどころか、減らすことすらままなりますまい。将来に希望を見出そうとする者に中途半端に期待させ、彼らを裏切らないためにも、NHKは建前だけの中途半端な中立姿勢を捨て、報道機関ではなく政府広報機関であり、権力チェックも国民への視点もないことを顕わにしてはいかがでしょうか。現場レベルでは頑張っているスタッフもいるでしょうが、だからこそ敢えて言わせて頂きます。