CPEへの想像力

フランスにおけるCPE(初期雇用契約)導入撤回の一報には、「革命の国」の伝統を受け継ぐ市民への敬意と、EUに悪しき前例を残さなかったことへの安堵を覚えた。そして、明けて今日(4/12)、各新聞社がCPE撤回にいかなる見方をしているか、所謂全国紙の社説を一通り当たってみたが、結果非常に失望した。
丁度拉致被害者横田めぐみさんの夫とされる男性に関する情報が出てきて、久々に拉致問題が大きく取り上げられたこともあり、必ずしも全紙が触れるわけではないと前もって予想はしていたが、取り上げたのは毎日のみ。撤回決定前に朝日、読売(いずれも4/7)でも触れられてはいるが、いずれもフランスの労働市場の硬直を批判するに留まっていたというのが私の印象である。基本的に他人事であり、無関心なのだ。そして、いずれも労働者ではなく、雇用者の視点で書かれているというのも共通点だろう。
何故海外の一法律、デモにここまで拘るか、訝しがられる方もいらっしゃるだろうが、CPEはフランスの内政問題には留まらない事象である、と私は考えている。あからさまに言えば、この問題は根本において日本の派遣労働問題、格差社会論と病巣は同一である。そして、その病巣は新自由主義グローバリズムに他ならない。しかし、派遣労働、格差問題には高い関心を払う毎日新聞をしてこの有様である。むしろ、状況はフランスより日本の方が悪く思われるのに、だ。
読売四月七日付社説は、「CPEが撤回されるようなことになれば、いずれ、もっと痛みを伴う事態に直面することになるのではないか」と締めくくる。むしろ反対ではないだろうか。CPEは一時的な雇用、経済刺激策にはなっても、長い目で見れば、経済に国民生活を売り渡し、失業者、貧困層の増加から社会不安を招く可能性が高い悪法だと私は見ている。経済に気を取られて、日本のメディアはもっと肝心で、かつ人間の生活の根本に関わる部分を見落としてはいないか。そして、それは日本のメディアは本当に読者を向いて仕事をしているか、広告主である企業にばかり目が行っていないか、という問いにも繋がる。

※日経のCPEをめぐる社説について触れられている、id:tazan様の記事(4/10)
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