敢えて言う、別に恩人とは思ってないから

楽天村上ファンドによるTBS買収劇が近日、メディアを賑わせていますが、それそのものには私は大した興味を持っていません。言論機関としての独立を守りたいと本気で考えるならTBSは株式を上場しなければ良かったでしょうし、楽天との提携で得られるメリットはむしろTBS側に大きいのではないかとも思います。「まあ、それもTVとITの融合の流れの一つとしてありじゃないの」という程度の認識です。
ただ、私はこの一件について、非常に個人的な視点から業を煮やしています。横浜ベイスターズの一ファンとして、「野球協約に抵触するからベイスターズは売却、ないし野球協約改正」という三木谷見解が許せない。これに関しては、楽天球団フロントの批判を通じて何度も疑問を呈してきた三木谷氏のスポーツビジネス当事者としての適正、資格をはっきりと「ない」と断言し、また、改めてなぜそのような人物が野球界に進出したのか、そしてなぜ「厳正な審査」をしてもそれが承認されたのか、という根本的な問いを投げかけたいと思います。
今回のベイスターズ売却計画からも、三木谷氏は野球協約が通常のビジネスに与える支障について一通り認識はしていると察せます。とすれば、彼はそのリスクを承知した上で(端から掟破り、無理矢理な規則改定を狙っていたという考えもありますが)野球界に参入した、と考えるのが妥当な解釈でしょう。しかし彼は一年も経たずに、強硬策に打って出ました。そして、「根回しは出来ている」と言わんがばかりに売却先まで用意して、他チームの経営に土足で踏み込み、そして何より他チームのファンの心に土足で踏み込んできました。スポーツビジネスは消費者であるファンを抜きには成立しないものでありながら、ここまで消費者を軽視出来る無神経さは、ある意味「巨悪」渡辺恒雄に匹敵すると言えます。別に私は親会社としてのTBSにそれほどこだわりを持ってはいませんが、それでもマルハ→TBSまでの紆余曲折の流れや、その中であった球団存亡の危機の記憶がそれほど風化していない時期に、こんな話があって心中穏やかであるとは到底言えません。以前から楽天は事業提携の形も含めTBSに興味を示していたとのことですし、もし今回の買収劇が突発的なものでないのなら、なぜそれに向けて足枷になるプロ野球参入をなぜ行ったのか、それともその段階で彼の中にはベイスターズを蔑ろにするシナリオが出来上がっていたのか、と言いたくなります。
どうあれ、業界全体を発展させていくという視点、ファンの心をいかに掴むかという視点がなければスポーツビジネスは究極的に成功しないにも関わらず、そういった視点が欠落しているとしか思えない人物が、その世界で成功するとは到底思えないし、出来る事なら早々とご退場願いたいという思いは禁じ得ません。同じく楽天が経営権を持つヴィッセル神戸も、不明瞭な監督交代、シーズン中にチームの精神的支柱であるカズの放出など、迷走の果てに二部降格は確実な情勢ですし、いっそサッカーからも撤退されてはいかがかとも。仙台にプロ野球を連れてきた、12球団制を維持した恩人はあくまで堀江社長で、彼はその成果を享受したに過ぎない(発展させたとはまだ言い難い)ですし、今からでもライブドアに球団を売ってみては?あなた、素質ないですから、多分。まあホリエモンも最近選挙に出てみたり、よく分からないですけど、敢えて地元の福岡じゃなく敗色濃厚な亀井静香に喧嘩売りに行ったあたり、小泉に恩を着せることでの政府関係の仕事の確保と、自身の話題性の継続という計算ずくの行動だったのかとも見ています。