阪神優勝への雑感

まずは、虎党の皆様、優勝おめでとうございます。
私自身は横浜ベイスターズのファンを自認していますが、阪神タイガース並びに阪神ファンへは、周囲に虎党が多いこともあり、親近感こそあれ敵意はほとんどありません。
今回の優勝は本拠甲子園で宿敵巨人を今季の必勝パターンで倒し、その必勝パターンの象徴的存在だった藤川のシーズン登板記録更新とセットで達成。野球界の主役交代の構図も含めて非常に印象的なものでしたし、シーズンを通じての戦いぶりは最もセ・リーグの覇者に相応しいものであったと思います。
しかし、だからこそ、一昨年との比較における全国区での盛り上がりの少なさを余計に感じるのです。一昨年の優勝は実に18年振りの待望の優勝であったし、監督も絵になりやすい星野監督(当時)が前面に出て話題を提供したという差はありますが、今回は全国区での盛り上がりはあまりなく、関西ローカルでの盛り上がりも前回ほどではないと感じます。
カウントダウンの段階からその原因が気になっていたので、少し私なりに考えてみたのですが、私はどうも二つの理由があるのではないかと思いました。
まず一つは、それまでプロ野球の二極構造を演出してきた相手である読売ジャイアンツの弱体化。政治の「55年体制」は野党・社会党の凋落と共に終焉を迎えましたが、野球の戦後二極体制は、皮肉にも与党の衰退で終焉を迎えたということです。そして、主流派であるジャイアンツへのアンチテーゼというタイガースの一面は失われ、弱者が強者に勝つことで溜飲が下がるという判官贔屓の人々にあまり関心を持たれなくなったのではないかと私は推察しています。
もう一つは、阪神タイガース自体が2003年の優勝以降、プロ野球における「勝ち組」に転じたということ。先の判官贔屓のファン云々という部分にも繋がりますが、年季の入った阪神ファンの中には、なかなか「常勝」巨人に勝てなくとも、そんな山あり谷ありのタイガースに自分の人生を投影しているという方も少なからずいるのではないかと思われます。しかし今や興行面でも実力でも、ひとり勝ち状態にある阪神タイガースに、そういった古くからのファンはかなり違和感を感じていて、それが今回の優勝を素直に喜べない=盛り上がれないという流れを呼んでいるのではないかと思えるのです。
勿論、こんな私の分析に関係なく、優勝に酔われている虎党諸兄も多くいらっしゃることでしょうが、プロ野球の社会的側面を考えた時、今回の阪神優勝には色々思うところがありました。結局、社会そのものがそうであるように、プロ野球もまた、ニーズの細分化、多元化へと進むのでしょうか?それとも、それに応えきれずに衰退していくのでしょうか?それ以外の道もあるかも知れませんが、明確に一つの時代に終止符が打たれたということはほぼ間違いないと思います。