それ見たことか

最近、河北新報WEB版やTVのローカルニュースでやたらと「○○市(町、村)の合併協議破談」というのを見るようになりました。去年の段階で相当数が合併協議を打ち切っているのに、今頃になって破談というのは、どうも結納までやった後に婚約取り消しをするカップルの如き無計画性かな、と小言の一つも漏らしたくなりますが、「平成の大合併」に先駆けて40年近い昔に行われた「昭和の大合併」のモデルケースとも言える町に生まれた身としては、それでも、大方の場合は合併するよりましだったと思えるのです。
そもそも、なぜ国が「一時的な痛み」である助成金を出す特例法までご丁寧に作って合併を推進するのか、と言えば、中央政府が地方の面倒を見るのが面倒臭いので、ならば市町村の数を減らして管理しやすくしてしまえ、というのが大雑把な理由でしょう。そこには、地方振興という視点はなく、官僚的な管理の思想と、数を減らせば支出が減るという、小学生以下のお粗末な政治家の計算しかないと私は思っています。一時、合併拒否、住基ネット拒否で全国的な注目を集めた我らが福島県の矢祭町は、「市町村合併をしない矢祭町宣言」の中で、
『矢祭町は地理的にも辺境にあり、合併のもたらすマイナス点である地域間格差をもろに受け、過疎化が更に進むことは間違いなく、そのような事態は避けねばならない』
と触れていますが、これはかなり真実に近いのではないでしょうか。私の住む町では、旧都市部はモータリゼーションの影響による商圏の変化から寂れましたが、山間部は人災とも言える各種補助金の打ち切りと、産業の衰退から「廃れ」ました。「昭和の大合併」時はそれでも、中央から地方への資産の再分配が良くも悪くも盛んだった時代であり、そこに地方からすれば救いがあったわけですが、今回の大合併はその基本原理に、地方の切り捨てというものを含んでいるという雰囲気がかなりあります。都市と地方の格差から生じる階層化というのは、触れると長くなるので詳しくは触れませんが、どうもそういうことが意図されているのではないかと勘ぐりたくなる部分があるのです。
勿論、「三位一体改革」などというお粗末な地方への政治丸投げとは違った形で、現状の地方交付税を巡る問題点は改善されなければならないとは思いますが、市町村合併が、特に行ったことのある町で破談となった時、どことなくほっとすると同時に、総務省に対し「それ見たことか」と毒づかずにいられないのが私の本音です。